健康のためにも美しい体型を得るためにも、ダイエットは実行したいことの1つですね。しかし、ダイエットしてもリバウンドしてしまい、ダイエットの効果を維持し続けることは難しいものです。

リバウンドする一番の理由は、やはり食べ物の誘惑に勝てないことでしょう。そして、せっかく苦労してダイエットしても、ちょっと食べ過ぎだけで簡単にリバウンドしてしまうことに驚いてしまいます。その結果、ダイエットを続けようというモチベーションがなくなってしまうものです。

ちょっと食べ過ぎるだけで太ってしまう原因は、誤ったダイエットをすることで太りやすい体質になってしまうことにあります。

正しいダイエットは、単に体重を減らすことではありません。体重を減らすことに加えて、太らない体質になることが正しいダイエットなのです。

ここではEMS(Electrical Muscle Stimulation電気的筋刺激)を利用して、正しいダイエットができる仕組みを分かりやすく解説します。

EMSとは?

EMSはElectrical Muscle Stimulationの略号で、電気的に筋肉の神経を直接刺激して筋肉を鍛える仕組みのことをいいます。正式な日本語訳は定められていないようですが、直訳である電気的筋刺激(法)であるとか、リハビリ領域では神経筋電気刺激療法と呼ばれたりしているようです。

元々は、中枢神経(脳と脊髄)の障害によりマヒした筋肉を電気刺激することで、マヒした筋肉の機能回復を促進する治療法として発展しました。しかし、現在ではスポーツ選手の筋力強化にも用いられるようになってきています。

EMSはダイエットに効果はあるの?

ウェブサイトを見てみると、EMSはダイエットに効果がないと解説しているサイトがかなりあるようです。結論から言うと、そのような意見は正しくもあり間違ってもいるとも言えるでしょう。

EMSの効果を学術的に調べた有名な研究として、ウイスコンシン大学の研究(2005年3月のSports Sience & Medicine誌電子版に掲載)があります。

この研究報告によると、腹筋の筋力と持久力、腹囲の減少には効果が認められました。しかし、体重の低下やBMI(肥満の判断基準として重要視されるもの)などには有意な変化が認められなかったということです。

平たく言うと、腹筋を鍛えて強くし、ウエストサイズを細くすることはできたけれども、体重を減らす効果はなかったと言えるでしょう。

しかし、これは8週間という短期の結果であり、長期的に見ると効果が期待できる可能性がEMSダイエットにはあるのです。

これからEMSでダイエットできる仕組みを解説しますが、まずはダイエットの原理原則を理解することが大切でしょう。

ダイエットの原理原則とは?

言うまでもありませんが、ダイエットの原則は、摂取カロリー(食べ物により体に入ってくるカロリー)を減らすことと、消費カロリー(運動や生命活動のエネルギーとして使われるカロリー)を増やして脂肪を減らすことです。

摂取するカロリーを減らすことは、食べ物や飲み物で体に入ってくるカロリーを減らすことです。余分なカロリーの一部はグリコーゲンとして肝臓などに蓄えられますが、その量はわずかなものです。大半は脂肪として蓄えられます。

もう1つのポイントである消費カロリー増やすには、有酸素運動により脂肪を燃やすこと、筋肉量を「減らさない」ことが重要になります。

ダイエットをすると、脂肪だけではなく筋肉も減ってしまうのです。筋肉は、使わなくてもカロリーを消費してくれます。この筋肉を「減らさない」ということにおいて、EMSが非常に役に立ちます。

消費されるカロリーの内訳は?

消費されるカロリーはどのような配分になっているのでしょうか?

人はただじっとして息をしているだけでもカロリーを消費します。これを基礎代謝といい、基礎代謝により使われるエネルギー量が基礎代謝量です。

基礎代謝量は「人が1日で使うエネルギー総量(総エネルギー消費;TEE:total energy expenditure)」の約60%くらいになります。

これは通常おこなうことができる運動で使われるカロリーよりも、かなり大きな量です。

上記のTEE(人が1日で使うエネルギー総量)は、

基礎代謝量
(何もせず横になっているだけで使われるエネルギーの量)

食べたものを消化したりするのに使うエネルギー
(食餌誘発性体熱産生DIT:diet induced thermogenesis)

家事など運動以外の身体活動に使用されるエネルギー
(NEAT:
non-exercise activity thermogenesis)

運動で使われるエネルギー

となります。

かなり分かりにくいですね。

乱暴に言えば、人が消費するエネルギーは、「内臓を動かしたり日常生活を行うために必要なエネルギー+消化吸収など食物を処理するためのエネルギー+運動するのに必要なエネルギー」であるということになります。

ここから分かるのは、食べる量や運動を含めた活動量(上記のNEAT+運動で使われるエネルギー)が同じであれば、つまり同じ人が同じ生活をするなら、基礎代謝量が大きければ消費カロリーが大きくなるということです。

つまり、基礎代謝量を大きくすることができると、太りにくい体質になるのです。

ナゼ?筋肉が減ると困る理由

筋肉が少なくなると、太りやすくなってしまいます。

「厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイト」によると、運動を除く普通に生活しているときに消費されるカロリーの割合は、筋肉22%、肝臓21%、脳20%、心臓9%、腎臓8%、脂肪組織4%、その他16%であるとのことです。

ダイエットで体重を減らすと、主に脂肪と筋肉が減ります。ひどい病気でないなら脳や内臓の消費するカロリーは、同じ人では体重が変化してもそれほど変わりません。

細かい計算は省きますが、上記サイトのデータから、体重70Kgの男性が7kgダイエットしたとき、筋肉と脂肪が同じ量だけ減ったとすると、1日当たり61Kcalほど基礎代謝量(消費カロリーの一部)が少なくなってしまいます。

しかし、筋肉を減らさず脂肪だけが減った場合、基礎代謝量の減少分は約31Kcalとほぼ半減するのです。

つまり、筋肉を減らさずにダイエット(基礎代謝量が31Kcal減少)をすると、筋肉と脂肪が同じ量だけ減ったとき(基礎代謝量が61Kcal減少)に比べて、何もしなくても消費されるカロリーが30Kcal(61Kcal-31Kcal)大きいということになります。

この30Kcalをバカにしてはいけません。脂肪1gが9Kcalに相当するので、毎日、脂肪が3.3g増える計算になります。1年で3.3g×365≒1.2Kgです。5年で約6Kgにもなります。30Kcalを甘くみてはいけないと言うことですね。

このように筋肉が減ると基礎代謝量が減る割合が大きくなります。結果として、太りやすい体質になってしまうのです。

EMSダイエットが優れている理由はこれ?

以上で述べたように、ダイエットでは筋肉を減らさないことが大切です。もちろん、ダイエットして筋肉が増えればそれに越したことはありません。しかし、筋肉を増やすには相当ハードな筋トレをしなければなりません。

筋肉を減らさずに脂肪だけを減らす場合でも、筋トレは必要です。しかし、筋肉を増やすことほどではないにしろ、筋肉を減らさないでダイエットする場合も、結構きつい筋トレをする必要があります。

筋トレ自体がきついこともありますが、筋トレができない原因が別にもあるのです。

筋トレをするには時間をとらねばなりません。どのようなことにしろ新しいものに取り組むためには、今までしている何かを止めて時間を作り出さなければなりません。

止めなければならない何かとは、楽しみにしているドラマかも知れません。1人でゆったりしている読書かも知れません。あるいは家族との団らんかも知れません。何かを止めるのはかなり難しいものです。

筋トレできつい思いをすることなく、何かを諦める必要もない筋肉を鍛錬法があります。それはEMSです。今している何かを諦めることなく、楽に筋肉を鍛えることができるのがEMSなのです。

ドラマを観ながら、読書をしながら、家族との団らんを楽しみながら、大抵のことをしながらENSで筋肉を鍛えることができてしまいます。

ひょっとすると、きつい思いをしなくてもいいことと、筋肉を鍛えるために特別の時間をつくり出さなくてもいいこと、そしてその結果ダイエットを継続できることが、EMSダイエットの最大の利点かもしれませんね。

EMSで筋肉を減らさないようにできる仕組み

脳の病気で体が麻痺した人に、EMSで筋肉を訓練すると、筋肉の減少をかなりの程度くい止められたという研究報告があり、EMSは廃用性筋萎縮(使わないことによって筋肉が少なくなる)を防ぐことができます。

ところで筋肉には速筋(白筋)と遅筋(赤筋)があります。速筋は瞬発力の筋肉で遅筋は持久力の筋肉です。

筋肉が衰えて減るのは、主に速筋なのです。遅筋は訓練しても増やすことが難しく、また運動をしなくても減ることは少ないと言われています。一方、速筋は運動で増やしやすく、反面、使わないことですぐに減ってしまいます。

比較的簡単に増やすことのできる速筋ですが、かなり大きな筋力を使う筋トレをしなければ、速筋を増やすことができません。1時間も2時間も続けられる軽い筋トレでは、速筋は鍛えられないのです。

EMSは、この速筋を電気で刺激して鍛えることができます。速筋を鍛えることができれば、ダイエットで生じる筋肉の減少を防ぐことができるのです。

ダイエットで減少する筋肉を減らさないようにできれば、ダイエットで生じる基礎代謝量の減少を少なくすることができます。基礎代謝量が減らなければ、先に述べたように太りにくい体質になるのです。

きつくないEMSにも弱点はあるの?

残念ながら、誰でも楽に行えるEMSにも弱点があります。それは、脂肪を燃焼させる有酸素運動を主として行う遅筋の多いインナーマッスルを、鍛える効率が悪いということです。

業務用のEMS機器を除いて、EMS機器での筋肉への刺激効果はインナーマッスルにまで到達することが難しいと思われます。つまりEMSで刺激できるのは、主に皮膚の真下にあるアウターマッスルであるということです。

アウターマッスルはインナーマッスルに比べて速筋の割合が多く、速筋は無酸素運動の筋肉であり脂肪を燃焼させる効果はほとんどありません。EMSでは遅筋も刺激されるため、脂肪の燃焼効果がないわけではありません。

しかし、多くのEMS機器で刺激できる筋肉の範囲は狭いものです。特定の筋肉を鍛えるときでも全身の他の筋肉も使われる筋トレと違い、EMSでは特定の筋肉しか刺激されません。そのため、消費されるカロリーは筋トレに比べかなり少ないということになります。

ここで言えるのは、EMSでダイエットをするためには、一部で行われているように広範囲の筋肉を刺激するため、スーツのようなEMS機器を使って多くの筋肉を同時に刺激するか、あるいは有酸素運動とEMSを組み合わせて行うことが必要だということです。

そしてこれが、EMSの最大の弱点と言えるかもしれません。そうであったとしても、ダイエットに伴って生じる筋肉の減少をEMSで防ぐことには、大きな価値があると言っていいのではないでしょうか。

おわりに

ここでは述べなかった種々の要素も含め、ダイエットの仕組みは意外と複雑です。ダイエットでは、摂取カロリー、消費カロリー(基礎代謝量、無酸素運動、有酸素運動)、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理など本当に様々な点を考慮しなければなりません。

最もコントロールの難しい摂取カロリーの制限ですが、運動すると食欲を増進するグレリンというホルモンが低下して食欲も低下し、その効果は約1時間ほど続くことが分かっています。

食事や間食などからの摂取カロリーを減らして、食べたくなったら運動をする。運動すれば睡眠も取れるようになり、気分も改善しストレスのコントロールもしやすくなります。

これが理想的な正しいダイエットだと言っていいかは分かりません。しかし、正しいダイエットを完璧に行うのは難しいものです。

せめて、運動、特にきつい筋トレをEMSに置きかえてEMSダイエットをすると、辛い思いをしないで正しいダイエットを続けることができるようになるかも知れませんね。一度、EMSダイエットについて考えてみてはいかがでしょうか?

 

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長