ダイエットというのは本当に続けるのが難しいですね。ダイエットに挑戦して、一度は体重を減らせた人は多いはずです。一時的にダイエットで成功することは比較的簡単でしょう。しかし、難しいのは「それから」です。ダイエットで体重を減らせたとしても、その減った体重を維持できた人はわずかではないでしょうか。

つまり、ダイエットは「する」ことではなく「し続ける」ことが大切であり、かつそれが難しいということです。

ダイエットをし続けることが難しい原因の1つが、摂食衝動(食べたくて食べたくてどうにも我慢できない欲求)の問題です。この摂食衝動は、「ダイエット→ダイエットがストレス(正確にはストレッサー)となる→ストレスホルモンであるコルチゾールが増える→コルチゾールの食欲増進作用→ダイエットによる空腹感と合わさって食べたい欲求が高まる」というようなメカニズムで生じることが考えられます。

さらに悪いことに、「摂食衝動→食べる→食べると直ぐに満足感が得られる→ある行動をして直ぐにいいこと(満足感が得られる)が生じるとその行動が繰り返される」という「正の強化」というものが生じて、ますますリバウンドしやすくなってしまうのです。

これに加えて、体重が増えて食べたことをあとあと後悔したとしても「直ぐに満足する>>>>>あとあと後悔する」というように、のちのち生じる後悔や反省のチカラは、直ぐに得られる満足に比べると、我慢できずに食べるという行動に与える影響力がはるかに小さいという問題があります。

この「食べたい!」という摂食衝動をいかにコントロールするのかが、ダイエットをし続けられるかどうかのポイントになります。そして、それに対する1つの答えが酵素ドリンクなのです!

しかし、酵素ドリンクのダイエット効果については賛否両論があります。疑うことなく有効であるとする意見もあれば、全く効果がないというものまで様々です。本当のところはどうなのでしょうか?ここでは、ダイエットにおける酵素ドリンクの真実に迫ります。

酵素ドリンクとは?

まず、酵素ドリンクとはいかなる飲み物なのでしょうか?

それは酵素が入っているドリンクだろう!というのは早計です。

酵素ドリンクに酵素が含まれているかもしれません。しかし、酵素ドリンクを発売しているメーカーのサイトを見ても、○○酵素含有などという具体的酵素名は見当たりません。薬機法(旧薬事法)との兼ねあいもありますが、酵素ドリンクの「売り」はどうやら酵素そのものではないようなのです。

ここで酵素ドリンクの製造方法をみてみると、多くの種類の野菜や果物などの植物を発酵させて作っているようです。この発酵に、酵母を使うのか乳酸菌を使うのか、その他の菌を使うのかは明示されていません。企業秘密なのでしょうか。また製造過程の説明もあまり書かれてはいません。

しかし植物をジュースにして混ぜただけでは、直ぐに腐ってしまいます。たくさんの野菜や果物などの植物を発酵させて、腐りにくくしているのが酵素ドリンクということになるでしょう

酵素の真実!

酵素ドリンクは、植物原料に何らかの発酵を行う菌類を混ぜ合わせて植物原料を発酵させたもののはずです。発酵の結果できるものは、アルコール(エタノール)や乳酸、酢酸など様々ですが、どのような菌種を使っているかは公表されていません

しかし、どのような菌種であれ、化学反応を起こして植物原料を発酵させるのは、菌類が作り出す酵素なのです。

分かりやすいアルコール発酵を例にして説明してみます。いくつかの段階を経て最終的に糖をアルコールにするのは、酵母の作り出す酵素なのです。酵母が作るアルコールデヒドロゲナーゼという酵素が、アセトアルデヒド(糖から変化した産生物)に水素をくっつけて、アルコール(エタノール)が作り出されます。このアルコールデヒドロゲナーゼという酵素は、アセトアルデヒドに水素をくっつけること以外に何もしません。

なんだか頭がフリーズして、ここから先を読みたくなくなってしまったでしょうか?酵素ドリンクによるダイエットを理解するためにはポイントとなる説明ですので、しばらく我慢してお付きあいくださいね。

さきほどの続きですが、酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼを飲んだとしても、お腹の中にアセトアルデヒドがなければ、アルコールデヒドロゲナーゼはお腹の中で何もしません。単なるタンパク質(酵素はタンパク質です!)と同様に、アミノ酸などに分解されて吸収されるだけです。

酵素ドリンクにアルコールは含まれていないので混乱したかもしれませんね。要するに、酵素ドリンクに酵素が含まれていたとしても、その酵素は植物原料を発酵させる以外の働きはしないので、人の体に直接よい働きをすることはないのです。

また、消化管に入ってきた酵素の多くは、胃酸や消化酵素でアミノ酸やペプチドに分解されて体内に吸収されるだけです。分解されなかった酵素は、分子量(その物質の性質が得られる最小単位のものの大きさ)が大きいために、腸からは吸収されず便とともに体外に排出されます。

そして、さらに問題となるのは、厚生労働省が定める清涼飲料水の製造基準です。この基準では、「pH4.0以上(中性により近いもの)のものの殺菌にあっては、その中心部の温度を 85°で 30 分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うこと」とされています。タンパク質をこの温度で加熱すれば、タンパク質の構造が壊れてタンパク質である酵素は破壊されてしまうのです。すなわち、清涼飲料水に分類される酵素ドリンクには、正常に働く酵素はほとんど含まれていないことになります。

以上から言えることは、酵素ドリンクに含まれている酵素は、タンパク質を食べる程度の意味合いしかないということなのです。

ここまでが、酵素ドリンクの「売り」は酵素ではないことの説明です。では、酵素ドリンクの「売り」すなわちメリットとは何なのでしょうか。以下の項で解説します。

酵素ドリンクのメリット!それは置き換えダイエットのかなめ?

ここでダイエットの大原則を確認してみます。ダイエットは、「摂取するカロリーの制限+普通の生活で消費するカロリー(基礎代謝量と日常生活で消費するカロリー)を増やす+運動で消費するカロリーを増やす」ということですね。基礎代謝量や日常生活で消費するカロリーは筋肉量を増やせば大きくできるので、筋トレするといいということになります。運動で消費するカロリーを増やすのは、有酸素運動をすることでしょう。

しかし、カロリーの量からみて最も大きい要素は摂取するカロリーです。ご飯は1膳160gで269Kcalです。これは時速6.4Kmで約43分間ジョギングした(体重60Kgの場合)ときに消費するカロリーに相当します。ご飯を1膳余分に食べると、それを消費するには40分以上もジョギングしないといけないのです。40分以上ジョギングしなければ、約30gの脂肪が蓄積される計算になります。1年間で11Kgも太ることになる計算ですね。食物のもつエネルギーは意外と大きいのです。

これを逆手にとって1日1膳分のカロリー摂取を減らせば、何も変えなくても1年で10Kg以上をダイエットできることになるのです。

ですから、ダイエットの一番効率的な方法は摂取するカロリーを少なくすること、つまり置き換えダイエットが有効ということになります。そして、カロリー制限のための置き換えダイエットで、空腹感による摂食衝動を和らげるために酵素ドリンクが大きな武器になるのです。これが酵素ドリンク最大のメリットと言えるかもしれませんね。

酵素ドリンク、本当の意義?

この酵素ドリンクですが、某サイトで人気ランキング上位のいくつかをみてみると、100mlあたりでカロリー150Kcal前後、タンパク質1g未満、脂質1g未満で、炭水化物は20-70gくらいとなっています。薬機法(旧薬事法)でアミノ酸が含まれていることを表示することは認められているので、調べた酵素ドリンクにはアミノ酸は含まれていないのでしょうか?

また、5大栄養素には、ここで述べたタンパク質や脂質、炭水化物の他にカルシウムなどのミネラルとビタミンがあります。酵素ドリンクの原料である野菜や果物には、ミネラルやビタミンが豊富に含まれています。しかし、ビタミンは熱や光、酸、アルカリ、そして酸素により分解してしまうものが多いのです。製造工程や製品管理のしっかりしたメーカーの製品を選ぶことが大切になりますね。しかし、その判断をするための情報をどのようにして入手するのかは悩むところです。

ところで、酵素ドリンクは植物を発酵させた食べ物(清涼飲料水)ですから、当然、食物繊維は含まれているでしょう。これらの含有成分からすると、酵素ドリンクは炭水化物と食物繊維、ミネラル、ビタミンの補給には有効であると言えることになります。

まず炭水化物についてですが、これは酵素ドリンクに結構な量が含まれています。酵素ドリンクは20ml程度を水で薄めて飲むのですが、水で薄めた酵素ドリンクを飲めば多少はお腹がふくれます。それにある程度の炭水化物を補給できるので、少し血糖が上がって空腹感を和らげることができるでしょう。つまり、酵素ドリンクで摂食衝動を抑えることができるのです。

次に食物繊維については、これは食事の前に飲むようにすると糖の吸収をおだやかにして、血糖の急激な上昇を防ぎます。逆に急激に血糖値が上がると、インスリンが大量に放出(分泌)されるのです。インスリンは脂肪の形成を促進し、脂肪の分解を抑えてしまいます。つまり、血糖が急激に上がると太りやすくなるのです。

なお、ミネラルやビタミンが体にいいことは説明するまでもないことですね。

以上から、酵素ドリンクを使用する意義は、置き換えダイエットにおける摂食欲求の緩和と、糖の吸収をゆっくりにして食べても太りにくくすること、そしてミネラルやビタミンを補充することであると言えるのではないでしょうか。

結局どうなの?酵素ドリンクのダイエット効果

結論は、酵素ドリンクにダイエット効果あり!です。ただし、使い方しだいという注釈つきではあります。

酵素ドリンクを飲むことで、摂食衝動を和らげてカロリー摂取を制限することができます。この特徴を利用して置き換えダイエットをするのです。1日の食事を1回か2回、酵素ドリンクで置き換えます。お腹がへったら酵素ドリンクを少量だけ飲むことで、空腹感を多少とも和らげることができるでしょう。摂取するカロリーを減らせば必ず体重は減ってきます。

置き換えでない食事をする前にも、酵素ドリンクを飲むといいでしょう。酵素ドリンクに含まれている食物繊維が、糖の吸収をゆっくりにしてくれて太りにくくなる可能性があるからです。

おわりに

ちょっと分かりにくい解説になりましたが、酵素ドリンクそのものにはダイエット効果は殆どありません。酵素ドリンクは置き換えダイエットと組み合わせてはじめて、ダイエット効果が得られるのです。

しかし、ここでもダイエットの原則を忘れないことが大切でしょう。ダイエットの原則とは、カロリー制限をして単に体重を減らすだけでは、太りやすい体質になってしまうということです。単なるカロリー制限では、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまいます。

筋肉が減ると、何もしないで寝ているだけで消費されるカロリーである基礎代謝量が減ってしまいます。そのうえ、家事などの日常生活で消費されるカロリーや運動で使われるカロリーも減るのです。体重は減るけれど、消費できるカロリーも減って太りやすい体質になってしまいます。

ですから酵素ドリンクを使って置き換えダイエットをするときにも、筋肉を減らさないように必ず筋トレを組み合わせてダイエットを行うようにしてください。酵素ドリンク+置き換えダイエット+筋トレで健康的にやせるというのは、ダイエットの王道かもしれませんね。

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長